夕顔の本棚

ここに掲載しているものはフィクションです。苦手な方はご注意ください。

[第一話]籠の鳥 一

 

今思い返しても、君ほど大人びた女の子は僕の周りには他にいなかったと思う。


それは君が、夢とか目標とか希望とか、そう言ったキラキラした類のものから一切隔離されて生きてきたからかもしれない。


この世に生を受けた瞬間から、君の人生のすべては決まっていて、それが当たり前だった君は、与えられた運命に疑問を抱いたり、抗ったりすることがなかったのだろう。


内側から発光しているかのような真っ白な肌に、全てを悟った、憂いを帯びた真っ黒な瞳。


誰もが羨む美貌と才能を備えた才色兼備でありながら、普通であれば人生のあちこちで知るはずの、幸せの味や喜びを知らない君の中身は「空虚」。

 


君は、空っぽだった。